徳島地方裁判所 昭和60年(わ)78号 判決 1986年6月11日
本籍
徳島県美馬郡貞光長字東浦六五番地の一
住居
同県同郡同町字東浦六五番地
医師
北川一善
昭和三年三月二五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官廣瀬勝人出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金三〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、徳島県美馬郡貞光町字町二七番地において北川病院を経営するとともに継続して有価証券の売買をしていたものであるが、自己の所得税を免れよりと企て、昭和五七年分の所得金額が三億八三三〇万八五四七円であり、これに対する所得税額が二億五九七八万六四〇〇円であるのにかかわらず、有価証券の売買につき他人の取引であるもののように仮装し、取得した有価証券を架空名義等に分散するなどの方法により所得を秘匿した上、同五八年三月一五日、同県同郡脇町大字猪尻字西ノ久保三六番地所在の脇町税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の所得金額が一億九〇七四万七〇二九円で、これに対する所得税額が一億一九五三万三九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の所得税一億四〇二五万二五〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 収税官吏の被告人に対する質問てん末書一四通
一 被告人作成の申述書
一 木村勉(二通)、川口憲史郎、北川綾子(二通)の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏の木村勉(二通)、北川綾子(五通)に対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の脱税額計算書
一 収税官吏作成の査察官調査書及び株式の売買損益調査書
一 三木茂義作成の査察官報告書
一 洲脇豊弘、齋藤稔、新島久通(二通)、丸山一男ら(五通)、高橋信次ら、実川弘昭ら、山下隆弘ら、井内久夫、松本勇作成の「証明書」と題する各書面
一 木村勉(二通)、丸山一男ら、梶本好之、山下隆弘ら、井内久夫(二通)、楠瀬治之作成の各申述書
一 検察事務官作成の捜査報告書一五通
一 押収してある昭和五七年分の所得税の確定申告書(一般分)等一綴り(昭和六〇年押第九三号の一)、同年分の所得税の修正申告書等一綴り(同号の二)
(法例の適用)
一 判示所為 所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)
二 労役場留置 刑法一八条
三 執行猶予 同法二五条一項
(裁判官 楠井勝也)